●10月19日(土曜日)13時30分から東京・六本木の政策研究大学院大学で、『かがり火』復刊10周年記念フォーラムを開催します。読者の方ならばどなたでもご参加いただけますので、ご希望の方はお早めにお申し込みください。
 本誌は1987年、年6回発行の隔月刊でスタートしたのですが、22年目の2009年4月、129号を最後に休刊に追い込まれました。そのことを知った読者の有志の方々が、『かがり火』をこのまま廃刊にしてしまうのはもったいないと、支局長名鑑を使って全国の読者に呼び掛け、8月29日に日本青年館で復刊決起集会を開いてくれました。この集会にはスペシャルオリンピックスの細川佳代子さん、イエローハット創業者の鍵山秀三郎さん、馬路村農業協同組合長の東谷望史さん、サラダコスモ社長の中田智洋さん、福島県矢祭町の元町長の根本良一さんたちが駆け付けてくれました。この集会がきっかけとなってカンパが集まり、本誌はその年の12月、130号を発行して復刊にこぎ着けることができました。
●発行人の小生が言うのも大変不謹慎な話ですが、ここまで続いていることを本人も不思議に思うことがあります。高邁な思想を掲げているわけでもなく、大物といわれる有名人を取り上げるわけでなく、人気の作家や評論家に執筆いただいているわけでもありません。鋭く社会問題を追及しているわけでもなく、むしろ中途半端な記事も多く、毎号冷や汗をかきながら反省の日々です。
●しかし雑誌本体の価値はともかく、かくもすてきな読者を抱えている雑誌は多くはないだろうと思っています。休刊になっておわびの手紙を出した時、ある読者が突然私を訪ねて来られました。印鑑と通帳を差し出して、これを役立ててくれとおっしゃるのです。何か映画かテレビで見たような場面だなと思いながら、ありがたさと恥ずかしさで体が熱くなったことを覚えています。その通帳の残高を見てみたい誘惑にかられたのですがぐっとこらえて、通帳には手を付けず印鑑と一緒にそのままお返ししました。
●また、カンパいただいた読者の方にお礼の手紙を出したところ、“この雑誌は必要と思ったからカンパしたのであって、同情したのではない。私がやりたいことを代わりにやってもらっているのだから、むやみに恐縮したりへりくだらないでいただきたい”と、叱責調の返信をいただいたこともあります。また、中国地方の読者の方は、ほとんど泣き声で電話をかけてきて、地方に住んでいる者がどんな思いで『かがり火』を読んでいるか知っているのか ! 勝手に出しておいて勝手に休刊されるのは困る !と怒られました。さぞかし熱い読者だろうと、購読者名簿を見てみたら購読料未納の方だったので苦笑いしたことがあります。カッとなって購読料が未払いなことを忘れてしまったのでしょう。
●いよいよ窮地に陥った時、本誌をご購読いただいている弁護士さんに相談に行きました。その時、弁護士さんは会社の清算手続きはいつでもできる。本当にそうなったら無料でしてあげましょう。私は『かがり火』を隅から隅まで読んでいるわけではないが、いい雑誌だと思います。ここでやめるのはもったいない。債権者の方々は私が説得してみますから、もう一度頑張ってみたらどうですかと、高額なカンパをしてくれました。倒産するにも弁護士費用が掛かると聞いていたものですから、この時も感激しました。
●近ごろの日本を「今だけ金だけ自分だけ」と評する人がいますが、『かがり火』をやっているとそんな風潮を感じることはみじんもなく、ゴーン会長の強欲はどこか別世界の出来事のように映るのです。金がすべての世の中になってしまったと嘆く人も多いようですが、意外に自利より利他の精神で生きている人が多いのではないでしょうか。
●それでは『かがり火』の基本的な考え方は何だとあらためて問われると、慌ててしまうのですが、本誌が大切にしているのは“常識”です。社会の規範となっているのは法律や制度や思想ではなく、常識だと思っているからです。常識というのは社会の暗黙の了解事項であり、社会通念です。しかし住みやすい社会をつくるための常識を醸成することは大変難しい。常識は鉄板のように固いものではなく常にふらふらして頼りない。だから常識の行き着く先が安心なのか、やばいところなのか結構気にしています。
●一昔前まで、地方に取材に行くと、ここにはナントカ時間というのがあって、時間どおりに人は集まらず、集会も定時には開会しないことが常識だといわれることがありました。しかし今はどこに行っても集会は予定時刻に始まります。常識がいい方向へ変わったのです。他にも、電車に割り込む人がいなくなったし、道路にゴミを捨てる人も少なくなりました。“早い者勝ち”という言葉もまれにしか聞かれなくなりました。社会常識が何がきっかけでいい方向に変わったのか大変関心があるのです。
●常識がいい方向に変化していくのは歓迎なのですが、悪い方向に向かう場合もあります。韓国や中国に対して“もっと強硬に出るべきだ”という言説が、ためらいもなく一般の人の口から漏れるようになれば、間違いなく常識に危険信号が点滅します。「戦争しないとどうしようもなくないですか?」発言が、平然と迎えられ、社会の常識となったときは国は間違いなく暗黒に向かうものと思います。本誌は右にも左にも偏ることのない健全な常識を心棒に据えて、これからも編集を続けていきたいと考えています。
●初めに戻って記念フォーラムですが、会場は大学のホールなので300名は余裕なのですが、夜の交流会を行う食堂は120名が定員です。誠に申し訳ないのですが、こちらは定員に達したら締め切らせていただきますので、何とぞご了承いただきたくお願い申し上げます。お申込みkagaribi@ruby.famille.ne.jpへお願いします。(K・S)